プロフェッショナルについて

劇団砂喰社

2014年12月28日 01:18



 1997年にSPACに所属して、「プロの舞台人として働くとは何か」と思っていた。
 それまで、別の仕事をしながら、趣味として演劇をやっていた身分としては、舞台に携わることが収入になるという、何とラッキーな仕事なんだ!と思っていた。
 当時は24歳、社会経験はあったが、まだまだ無知であったから仕事しながら学ぶことが多かったが、当時の芸術総監督:鈴木忠志氏から学ぶことは本当に多かった。
 しかし、当時のポジションは制作。やはりやりたかったのは創作。契約を解除してTOMO☆PROJECTを立ち上げた。
 マーケットの小さい地方で、演劇創作を生業にしていくのは試行錯誤だ。勿論、今も。

 先日、とある劇団の代表に「松尾さんは、演劇を生業にしているからプロですよね?」と言われた。
 「はい、そうです」
 「プロの演出家が演出をしているのだから、あなたの劇団はアマチュアなんですか?」
 と、言われた。
 「出演者は、演劇を生業にしていなから、まずプロの劇団ではないですね。」

 私は、殆どアマチュアの方に演技指導し、舞台に立つノウハウを教え、舞台作品が出来るようお手伝いしてる。まあ、劇団によっては、少年団の外部コーチのようなものでしょうかな?それを自分が主宰しているのもありますが。舞台に立つ為のノウハウを教え、関わるメンバーたちに技術を提供している。公演会場がとれるよう営業や企画もしている。人によってはプロへの道をサポートしている。

 今はそのようなことをしている訳ですが、いわゆるアマチュアの方とお話して、確実に違うと思うことがある。「誰のための演劇創作なのか」。
 劇団や作品によっては、出演者のため、観客のため、スポンサーのための作品づくりをしている。
 今の私は「自分のため」の作品づくりはしていない。

 ここで勘違いされると困るのは、出演者のため、観客のため、スポンサーのための作品が自分の意に反している訳ではないということ。ここが、プロとアマチュアの意識の違いだと思うのだが、他人のための作品づくりでも、基本自分の創りたいものではあるのですよ。

 ただ、「自分を満たすためだけ」の作品づくりはしていない、だけ。

 たまに「プロを目指してる」と言う人がいるんだけど、やることは「自分を満たすためだけ」をしている人が多いね。それでプロになれちゃえる人は、相当才能・実力のある人なんでしょうが、私は自分を満たすもの=人に受け入れられるものではないと知っているほどマイナー思考なので、というか、それは今まで散々公演したので、そういうのに飽きてきた…いや、呆れてきた、という感じかな?気がつけば100本以上、演出しているので、結果、作品づくりをして、自分が一番満足できるのは、観客が喜んだり泣いたりしている姿を見るのと、出演者たちが大勢の観客に囲まれて褒められる姿を見ることなのね。

 色んな演出家がいますが、私はそういう演出家、なんです。それを生業にしているというか。

 ですから、本番はなるべく万全の準備をするように努力するし、体調もそう。身体に悪いことはしません。酒、タバコやりません。どんなことがあっても、本番前に酒は飲みません。体調も意識も低下するので、お金を払って、時間をつくって観てくださる方に失礼になりますからね。

 スポーツ選手が、翌日試合がある前に体調不良を起こすようなことをしないのと、同じ。良い結果にはつながりませんから。昔、テレビで二日酔いになりながら、テレビドラマの撮影をしていたと仰っていた俳優さんのインタビューを聞いてゲンナリする。まあ、テレビは無料で見られるから、質が悪くても視聴者にそう影響はないのでしょうが、そこに何百万、何千万円を支払うスポンサーがいて、そのくらいの商品価値なんだなと。

 演劇やってると、時々、こう言われる。映画は1,800円で観られる、プロの演劇はそれに比べると高価格だが、作品によっては映画を観れば良かったと思うことがある、と。最初それを聞いて、自分の活動を正当化するために「演劇は生だから」と反論したが、一般的に考えれば、ごもっともなんですよ。

 それで私は、お金と時間を費やしてくれるのであれば、価値のあるものを創らねば!と思うようになった訳です。そして今の形態、作風になったのかもしれません。

 つまり「費用対効果」。

 全部自分たちが持ちだしで無料で見せるなら何をやっても良いが、観客に時間とお金を使ってもらう訳だから、何かを獲得して帰ってもらいたいと今の私は思います。観客なんかどうでも良いと思う演劇人は、一人カラオケをやれば良い。観客にみせる必要は無い。

 そこが、プロになりきれない方との考え方の違いかなと。

 なんてことを言ってしまうので、嫌われてしまうのですがね。勿論、品格のレベルはそれぞれ。わざわざ、パンツをチラチラさせて喜ばせる舞台もあれば、サプライズで喜ばせる舞台もある。それは創り手のセンスとバランスと品格になることでしょう。そこも私はまだまだ試行錯誤ですが。

 その道だけで生きていくためには、それを支援してくる、理解してくれる人が本当に沢山必要。だからといって、自分のポリシーを失ってしまうのは舞台に影響が出てしまうのかもね。

 「費用対効果」「演劇公演の最終生産物」「舞台公演の理想の光景」を常に描きながら作品づくりをしているか否かが、プロフェッショナルとアマチュアの違い…ですな。


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